2021年11月24日水曜日

ドラマ「地獄が呼んでいる」(全6話)

ある日突然
なんの前触れもなく目の前に現れる顔
その顔がこう告げる
「お前は○○後の××時に死ぬ
 そして地獄へ行くことになる」と

その予告から死までの時間は人それぞれ
数年後の人もいれば、ほんの数十秒後の人もいる
予告された時間になると
3体の怪物のような使者が現れ
対象者を暴力的に痛めつけ
最後に謎の光を放って焼死させる
そしてどこかへ消えていく

すべては神の御業だと説く団体・新真理会
"議長"と呼ばれる代表チョン・ジンスは
地獄の使者が現れる一連の現象を"試演"と呼び
これは「正義感をもって生きろ」という神からのメッセージだと説く

一方で"矢じり"と名乗るグループが現れる
犯罪者の実名を公表し、制裁を加え
そのシーンをネットで配信する過激なグループ
悪人を罰しているだけだと主張する彼らに罪悪感はない

「人は正しく生きるべきだ」と主張する普通の人たち
それが集団になり、さらに組織が大きくなるとどうなるか
誰もが何かおかしいと気づいているのに口にできない
間違っていると言ってしまうと
信じてきたものすべてを否定することになるから

理解できない、解明できない不思議な現象
これを"神の御業"と銘打って恐れおののく
信仰という掴みどこの無いもの
ドラマではウソとわかりやすい"怪物"がやってくるが
これが地震や台風などの自然災害だったら?
それを"神が与えた罰"と言われたら?
罰を受ける人は悪い人で地獄へ落ちる
逃れたければ正しい行いをしろと説く
そう信じれば世の中が良くなるはずではないか?
ならばそう信じられる世の中にするために
原則から外れた事例は排除・隠ぺいするべきだ、と
カルトがなぜ時折恐ろしい事件を起こすのか
それがわかりすぎるほどわかるドラマでした

地味なおじさん刑事が
何気なく言った"自律"ということば
これがカギかも

テーマも映像も全体的に暗くて重くて
かなり激しい暴力シーンと
そこから漂う憎悪とか恐怖とか
圧倒的な負のエネルギーが
これでもかというくらい画面から発せられるので
見終わった後はかなりの疲労感と虚無感に襲われます
これから見る人は心の準備を

「地獄が呼んでいる」 Netflix公式サイト

 画像: 映画.comより

2021年9月27日月曜日

映画「罪の声」

- 勝手な理屈で人生を奪われるのは
  いつも弱く小さな者たちだ -

 画像:映画.comより

英国式のスーツを手がける小さなテーラー
父親からその店を受け継いだ俊也(星野源)は
妻と娘と3人でささやかながら幸せに暮らしていた
ある日、クリスマスツリーの飾りを探しているとき
押入れの天袋に父の名前が書かれた箱を見つける
箱の中には父が生前使っていたらしい道具や
自分が子どものときに遊んだおもちゃなど
ガラクタのような古い細々したものが詰まっていた

そこに黒革の手帳と「1984」と書かれたカセットテープを見つける
手帳には英語でびっしりとメモが書かれていた

俊也は古いプレーヤーを引っ張り出して
そのカセットテープを聞いてみる
自分らしき子どもが当時の流行歌を歌っている
はやし立てる父の声も聞こえてくる
なつかしさに目を細めていると
突然、歌声が途切れ
同じ子供の声が話はじめる

「キョウトヘ ムカッテ イチゴウセンヲ ニキロ...」

たどたどしい口調で文章を読み上げる声

「これ... オレ?」


 画像:映画.comより

テープから聞こえてきた自分の声
手帳に書かれていた英語のメモの内容
それが35年前に起きた事件とつながる
食品会社ばかりを狙った脅迫事件

同じころ新聞社に勤める記者阿久津(小栗旬)が
上司の指示でその事件を調べていた
35年前の事件当時は世間をにぎわせたが
とっくに時効になり
結局身代金の受渡しは失敗
犯人は一円も受け取っていない
死者も出ていない
そんな事件を今さら調べてどうするのか、と
阿久津は不満を口にする

ふたりはそれぞれ別の角度から事件を追う
やがてふたりが出会ったとき
ようやく事件の真相が見えてくる
35年前いったい何があったのか
犯人の目的は何だったのか
俊也の声を録音したのは誰だったのか
声が使われた子供は、俊也以外にもあと2人いた
その子どもたちはどうなったのか


 画像:映画.comより

映画の中のお菓子会社は「ギンガ」と「萬堂」
モチーフとなっているのはあのグリコ・森永事件
社長の誘拐事件に始まり
青酸ソーダ入りのお菓子
警察を挑発するような挑戦状
容疑者となったキツネ目の男
身代金受け渡し方法の指示をする子どもの声

現実には事件の真相は未だに謎
でも映画の中では"真相"が明らかになります
すべてが明らかになったとき
その声を録音した相手に俊也が詰め寄ります
このテープを見つけて苦しんだこと
今も苦しいこと
これから先もずっと
この罪を背負って生きていかなくてはならないこと
それが本当にあなたの望みだったのか?と

同年代の人の多くがきっと
まだ記憶に残っている事件
あの事件の真相はこうだったのかもしれないと
思わせる迫力がありました
何も知らずに巻き込まれた子どもたち
実在したあの声の子どもたちはどうなったのか
それを思うと胸が痛い

原作者・塩田武士が
犯人は「フィクション」だけど
犯人による脅迫状や挑戦状、事件報道は
極力史実通りに再現した
とコメントしているだけあって
とにかくリアリティたっぷりで
訴えたいことが明確で
心に残る作品でした

映画「罪の声」公式サイト

 予告編

公開:2020年10月

2021年9月26日日曜日

映画「おと・な・り」

生活音

目覚まし時計の音
コーヒー豆をガリガリ挽く音
加湿器の水が無くなったアラーム
帰宅する足音と
キーチェインのじゃらじゃらという音
ベランダで洗濯物を干しながら歌う歌

フラワーデザイナーを目指し
留学のためにフランス語を勉強しながら
花屋で働く七緒(麻生久美子)

仕事として求められる写真と
自分が撮りたい写真とのギャップに
悩むカメラマンの聡(岡田准一)

壁の薄いアパートでお隣同士で暮らすふたり
相手が男であり女であること以外は
顔も名前も知らないもの同士が
それぞれの悩みを抱えながら生きている
毎日聞こえてくる生活音に
お互いなぜか励まされホッとする

聡のアパートに突然現れる茜(谷村美月)と
七緒の働く花屋に現れる氷室(岡田義徳)
このふたりの出現で聡と七緒の生活が変化し始める

ふたりに決断の時が迫る

画像:映画.comより

実際こんなに音が筒抜けだったら
ちょー怖いと思うのですけど(^^;
全体的な画面の雰囲気と
主演のふたりのテンションの低さと
静かな中に聞こえてくる生活音が
逆に"人が住んでいる"という安心感をくれる
そんな空気感を作っていました

エンドロールのバックに流れる会話が良いので
飛ばさずに最後まで見て欲しいですw

あと
はっぴいえんどの「風をあつめて」
見終わったらきっと口ずさみます🎶

公開:2009年5月

2021年8月24日火曜日

映画「ホテルビーナス」

真っ暗な画面に響く足音
空っぽの病院ベッド
無音のままの言い争い
倒れこむ男
そこに流れてくるギターの音

町をふらふらと歩いて
ヤ〇ザ風の男と肩がぶつかり
無抵抗のままボコボコにされる男の心の声

「あの時あのまま
 死ねたらよかった」

冒頭のシーン
かっこいい!と
思わず言ってしまいました
ものすごく好きな雰囲気

日本映画だけど
セリフは全編韓国語
画面はほぼモノクロ
町並みも、歩く人もアジア系ではなく
草彅くん演じるチョナンが"僕の国"と言っているのが
どこを指すのかもあいまいなのだけど
そこはどうでもいいのかも
時代も場所も架空の話
どこでもなく、どこにでもなり得る

映画のキャッチコピーは
「そのドアを開けるとき やさしさがあふれ
 そのドアを閉めるとき 涙があふれる」でしたが
ホテルビーナスは
そんなほのぼのとした雰囲気じゃなく
それぞれが過去に傷を持つ者たちが
つかの間の休息を求めて流れつくところ
どこから来たのか
いつまでいるのか
名前さえ明かさず
過去に犯した罪と罪悪感をかかえ
死ぬことも生きることも出来ず
ただじっとそこにとどまって
時を過ごすものたち

生きてても死んでもいいなら
死んでしまえと言い放つマダム
そのあとに続く言葉に愛が込められる

時々挿し込まれる足元のアングルの映像
チョナンが刻むタップのリズム
70年代風の長髪とブーツカットのジーンズ
LOVE PSYCHEDELICOの音楽
挿入歌のDesperadoも効いてました

公開は2004年
今は主役級の有名俳優のイ・ジュンギが
ボウイという名の若僧役で出ています
映画デビュー作だそうです

 ポスター:映画.comより

Yahoo!映画「ホテルビーナス

公開:2004年3月

2021年8月23日月曜日

映画「ミッドナイトスワン」

第44回日本アカデミー賞(つまり2020年作品)で
最優秀作品賞と最優秀主演男優賞(草彅剛)の2冠に輝いた作品

  予告編(30秒)

草彅剛が演じるのはトランスジェンダーの凪沙(ナギサ)
ぜんぜん美人じゃないし
一目で男性が女装しているとわかる風貌
新宿でダンスや接客をするクラブで働いている
そのことを未だ知らない実家の母親から
親戚の中学生一果(イチカ)を預かるよう言われ
仕方なく面倒見ることになる
世間がナギサを見るときの違和感・嫌悪感は
そのままナギサの中に潜むもの
子供の時に海で感じたもの
何故自分はスクール水着じゃなくて海パンなのか
自分の体、親の目、世間の目
辛くて恥ずかしくてたまらない
そんな思いをずっと抱えながら生きてきた
その悲哀が無言の表情からにじみ出ていました

さらにすごいのはナギサが髪を短くして
"男"として就職する決意をするシーン
その男の姿がすごくぎこちなくて
男なのに、男の恰好してる方が
女装よりはるかに違和感がある
それはなんだかすごいことだと思いました

一果役はオーディションで選ばれた新人の女の子
まだおでこにニキビ跡が残るあどけない感じ
顔にあまり表情が無くてぼそぼそしゃべるのも
バレエのシーンだけが輝いて見えるのも
おそらく監督の意向なのかな
あまり演技らしい演技はしていない感じ
バレエのシーンは本当に素敵でした

逆に、一果のお友だちリンちゃん役の子は
こちらも新人だそうですがしっかり演技してました
一果の才能に嫉妬しながらも
一果のことが好きで面倒みて応援し
自分と親に絶望していく感じが
すごく切なくて悲しくて
リンちゃんのストーリーをもう少し見たかったと
思ってしまいました

一果の母も、リンの母も
愛情が無いわけじゃない
いや、無いのにあると勘違いしているのか?
母の愛情(だと思っているもの)が子供を傷つけ追いつめる
それはナギサの母も同じ

一果が舞台の上でつぶやいた「お母さん...」
あれは誰を思い浮かべていたのか

2021年8月15日日曜日

映画「浅田家!」

 「弟は なりたかった写真家になった
  そう 家族全員を巻き込んで」

という兄のつぶやきで始まるこの映画は
実在する写真家・浅田政志(あさだまさし)の物語
政志役は二宮和也、兄を妻夫木聡が演じています

映画「浅田家!」予告編


きっかけは写真学校の卒業課題

「一生であと一枚しかシャッターが切れへんとしたら
 お前は何を撮る?」

そう問いかけられた政志の頭に浮かんだのは家族
子供の頃、父と兄と政志が同時にけがをして
看護師の母のところに全員集合
その嘘みたいな状況にみんなで大笑いした記憶
そのシーンを再現すること
ノリノリの両親としぶしぶの兄の協力で
政志が撮った渾身の一枚は最高賞の学長賞を取る
当然そのままプロになるものと誰もが期待していたが
卒業後の政志は定職にもつかずパチンコにあけくれる
家族の心配はわかっているが
何を撮りたいのかわからない

父はなりたかった自分になれたのか?
母はなりたかった看護師になった
忙しく働く母の代わりに父が家事を引き受け
ふたりの息子を育てた
それが自分の誇りだと言う父
政志は問いかける
「父ちゃん、本当は何になりたかったん?」 
父の答えは「消防士」だった
その夢をかなえるため
政志は消防車と消防服まで借りて
(借りたのは兄だがw)
本気のコスプレをして家族写真を撮った

この消防士を手始めに
レーサー、極道、海女さん、サッカー日本代表
戦隊ヒーロー、泥棒、酔っ払いと
家族全員であらゆるもの扮して写真を撮り
撮りためた写真で写真集を作り
それで勝負に出る決意をする

「浅田家!」と銘打った写真集は
最初は鳴かず飛ばずだったものの
写真界の芥川賞と呼ばれる木村伊兵衛写真賞を受賞する
それを期に、政志は"家族写真"のプロとなり
日本全国から依頼を受けて家族写真を撮るようになる

そんな時、東日本大震災が起きる
政志は写真を撮った家族を訪ねて被災地へ向かう
そこで出会ったボランティアの上田は
津波で泥だらけになった写真を集め
洗って家族に返す活動をしていた
政志もその写真洗浄を手伝ううちに
津波で父親を亡くした少女と出会う
少女に家族写真を撮って欲しいとせがまれるが...

前半は政志と家族の普通じゃない日常が
面白おかしく描かれています
政志と家族が全力でふざけてる姿が
おかしいけどうらやましい感じ
これみたらやってみたいと思う人が
きっとたくさんいるはずw

後半、政志が浅田家以外の家族写真を撮るようになると
だいぶ雰囲気がかわります
それぞれの家族のいろいろな思い
家族のあり方
家族写真の意味
そういうものが家族の数だけある

写真を手に取るとき
そこに見えるものだけじゃない
さまざまな記憶や思いがよみがえる
それが写真が持つ力なのかも

「浅田家!」公式サイト

公開:2020年10月



2021年8月10日火曜日

映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」

「ボブのおかげで
 別の人生もあるって気付いた」

予告編

ジェームスはストリートミュージシャン
というと聞こえはいいが
ジャンキーのホームレス
ボロボロのギターで誰も聞かない歌を歌う
そんな生活から抜け出したいと思っているが
声をかけてくるのは
邪魔だからどけと文句を言う店の人や
同じジャンキーや薬の売人たち

ある日、これが最後のチャンスと
低所得者用のアパートを斡旋してもらう
今度こそという決意で新たな生活を始めたところに
1匹の猫が迷い込んでくる
追い出そうとするがなぜか彼のそばを離れず
一晩だけと、ともに過ごすことに
翌朝飼い主を探そう近所を歩き回るが見つからず
一旦は別れを告げるが
再びジェームスの前に現れた猫は怪我を負っていた
なんとか助けようと再び飼い主を探すがやはり現れず
近所に住むベティから無料で見てくれる動物病院を紹介され
ジェームスは猫を抱えて病院へ向かう

無事に治療が終わり、薬をもらって帰ろうとするが
診療は無料だが薬代は別だと言われ
ジェームスは翌週の食事代になるはずだった
なけなしのお金を使うことに

動物好きのベティの助けを借りながら
ボブと名付けたその猫との生活がスタート
元気になったボブを置いて
ジェームスはお金を稼ぐため町へ出かけるが
ボブはこっそりバスに乗ってついてきた

ボブがそばにいることで
人々がジェームスを見る目が変わり
やがて奇跡のような出来事が...



原作は主人公のジェームスが書いた本
ボブという名のストリート・キャット

ボブ役の猫はなんと本物のボブです
オーディションはしたもののしっくりくる猫が見つからず
結局ボブ本人(猫だけど)が出演することになったそうです
初めて登場するシーンのシリアルの箱をのぞくとことか
病院へ連れていかれるとことか
バスに乗るとことか
とにかくボブの表情が秀逸です
ときどき挿入されるボブ目線の映像も効いていて
ボブの気持ちがわかる気がしちゃいます

世の中の底辺みたいなところにいたジェームスに
手を差し伸べてくれる人はいたけれど
ジェームスが本当に立ち直ることができたのは
自分を必要としてくれる存在ができたことだったようです

He show me what life could be like on the other side.

日本公開:2017年8月

ドラマ「地獄が呼んでいる」(全6話)

ある日突然 なんの前触れもなく目の前に現れる顔 その顔がこう告げる 「お前は○○後の××時に死ぬ  そして地獄へ行くことになる」と その予告から死までの時間は人それぞれ 数年後の人もいれば、ほんの数十秒後の人もいる 予告された時間になると 3体の怪物のような使者が現れ 対象者を暴...