2021年8月24日火曜日

映画「ホテルビーナス」

真っ暗な画面に響く足音
空っぽの病院ベッド
無音のままの言い争い
倒れこむ男
そこに流れてくるギターの音

町をふらふらと歩いて
ヤ〇ザ風の男と肩がぶつかり
無抵抗のままボコボコにされる男の心の声

「あの時あのまま
 死ねたらよかった」

冒頭のシーン
かっこいい!と
思わず言ってしまいました
ものすごく好きな雰囲気

日本映画だけど
セリフは全編韓国語
画面はほぼモノクロ
町並みも、歩く人もアジア系ではなく
草彅くん演じるチョナンが"僕の国"と言っているのが
どこを指すのかもあいまいなのだけど
そこはどうでもいいのかも
時代も場所も架空の話
どこでもなく、どこにでもなり得る

映画のキャッチコピーは
「そのドアを開けるとき やさしさがあふれ
 そのドアを閉めるとき 涙があふれる」でしたが
ホテルビーナスは
そんなほのぼのとした雰囲気じゃなく
それぞれが過去に傷を持つ者たちが
つかの間の休息を求めて流れつくところ
どこから来たのか
いつまでいるのか
名前さえ明かさず
過去に犯した罪と罪悪感をかかえ
死ぬことも生きることも出来ず
ただじっとそこにとどまって
時を過ごすものたち

生きてても死んでもいいなら
死んでしまえと言い放つマダム
そのあとに続く言葉に愛が込められる

時々挿し込まれる足元のアングルの映像
チョナンが刻むタップのリズム
70年代風の長髪とブーツカットのジーンズ
LOVE PSYCHEDELICOの音楽
挿入歌のDesperadoも効いてました

公開は2004年
今は主役級の有名俳優のイ・ジュンギが
ボウイという名の若僧役で出ています
映画デビュー作だそうです

 ポスター:映画.comより

Yahoo!映画「ホテルビーナス

公開:2004年3月

2021年8月23日月曜日

映画「ミッドナイトスワン」

第44回日本アカデミー賞(つまり2020年作品)で
最優秀作品賞と最優秀主演男優賞(草彅剛)の2冠に輝いた作品

  予告編(30秒)

草彅剛が演じるのはトランスジェンダーの凪沙(ナギサ)
ぜんぜん美人じゃないし
一目で男性が女装しているとわかる風貌
新宿でダンスや接客をするクラブで働いている
そのことを未だ知らない実家の母親から
親戚の中学生一果(イチカ)を預かるよう言われ
仕方なく面倒見ることになる
世間がナギサを見るときの違和感・嫌悪感は
そのままナギサの中に潜むもの
子供の時に海で感じたもの
何故自分はスクール水着じゃなくて海パンなのか
自分の体、親の目、世間の目
辛くて恥ずかしくてたまらない
そんな思いをずっと抱えながら生きてきた
その悲哀が無言の表情からにじみ出ていました

さらにすごいのはナギサが髪を短くして
"男"として就職する決意をするシーン
その男の姿がすごくぎこちなくて
男なのに、男の恰好してる方が
女装よりはるかに違和感がある
それはなんだかすごいことだと思いました

一果役はオーディションで選ばれた新人の女の子
まだおでこにニキビ跡が残るあどけない感じ
顔にあまり表情が無くてぼそぼそしゃべるのも
バレエのシーンだけが輝いて見えるのも
おそらく監督の意向なのかな
あまり演技らしい演技はしていない感じ
バレエのシーンは本当に素敵でした

逆に、一果のお友だちリンちゃん役の子は
こちらも新人だそうですがしっかり演技してました
一果の才能に嫉妬しながらも
一果のことが好きで面倒みて応援し
自分と親に絶望していく感じが
すごく切なくて悲しくて
リンちゃんのストーリーをもう少し見たかったと
思ってしまいました

一果の母も、リンの母も
愛情が無いわけじゃない
いや、無いのにあると勘違いしているのか?
母の愛情(だと思っているもの)が子供を傷つけ追いつめる
それはナギサの母も同じ

一果が舞台の上でつぶやいた「お母さん...」
あれは誰を思い浮かべていたのか

2021年8月15日日曜日

映画「浅田家!」

 「弟は なりたかった写真家になった
  そう 家族全員を巻き込んで」

という兄のつぶやきで始まるこの映画は
実在する写真家・浅田政志(あさだまさし)の物語
政志役は二宮和也、兄を妻夫木聡が演じています

映画「浅田家!」予告編


きっかけは写真学校の卒業課題

「一生であと一枚しかシャッターが切れへんとしたら
 お前は何を撮る?」

そう問いかけられた政志の頭に浮かんだのは家族
子供の頃、父と兄と政志が同時にけがをして
看護師の母のところに全員集合
その嘘みたいな状況にみんなで大笑いした記憶
そのシーンを再現すること
ノリノリの両親としぶしぶの兄の協力で
政志が撮った渾身の一枚は最高賞の学長賞を取る
当然そのままプロになるものと誰もが期待していたが
卒業後の政志は定職にもつかずパチンコにあけくれる
家族の心配はわかっているが
何を撮りたいのかわからない

父はなりたかった自分になれたのか?
母はなりたかった看護師になった
忙しく働く母の代わりに父が家事を引き受け
ふたりの息子を育てた
それが自分の誇りだと言う父
政志は問いかける
「父ちゃん、本当は何になりたかったん?」 
父の答えは「消防士」だった
その夢をかなえるため
政志は消防車と消防服まで借りて
(借りたのは兄だがw)
本気のコスプレをして家族写真を撮った

この消防士を手始めに
レーサー、極道、海女さん、サッカー日本代表
戦隊ヒーロー、泥棒、酔っ払いと
家族全員であらゆるもの扮して写真を撮り
撮りためた写真で写真集を作り
それで勝負に出る決意をする

「浅田家!」と銘打った写真集は
最初は鳴かず飛ばずだったものの
写真界の芥川賞と呼ばれる木村伊兵衛写真賞を受賞する
それを期に、政志は"家族写真"のプロとなり
日本全国から依頼を受けて家族写真を撮るようになる

そんな時、東日本大震災が起きる
政志は写真を撮った家族を訪ねて被災地へ向かう
そこで出会ったボランティアの上田は
津波で泥だらけになった写真を集め
洗って家族に返す活動をしていた
政志もその写真洗浄を手伝ううちに
津波で父親を亡くした少女と出会う
少女に家族写真を撮って欲しいとせがまれるが...

前半は政志と家族の普通じゃない日常が
面白おかしく描かれています
政志と家族が全力でふざけてる姿が
おかしいけどうらやましい感じ
これみたらやってみたいと思う人が
きっとたくさんいるはずw

後半、政志が浅田家以外の家族写真を撮るようになると
だいぶ雰囲気がかわります
それぞれの家族のいろいろな思い
家族のあり方
家族写真の意味
そういうものが家族の数だけある

写真を手に取るとき
そこに見えるものだけじゃない
さまざまな記憶や思いがよみがえる
それが写真が持つ力なのかも

「浅田家!」公式サイト

公開:2020年10月



2021年8月10日火曜日

映画「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」

「ボブのおかげで
 別の人生もあるって気付いた」

予告編

ジェームスはストリートミュージシャン
というと聞こえはいいが
ジャンキーのホームレス
ボロボロのギターで誰も聞かない歌を歌う
そんな生活から抜け出したいと思っているが
声をかけてくるのは
邪魔だからどけと文句を言う店の人や
同じジャンキーや薬の売人たち

ある日、これが最後のチャンスと
低所得者用のアパートを斡旋してもらう
今度こそという決意で新たな生活を始めたところに
1匹の猫が迷い込んでくる
追い出そうとするがなぜか彼のそばを離れず
一晩だけと、ともに過ごすことに
翌朝飼い主を探そう近所を歩き回るが見つからず
一旦は別れを告げるが
再びジェームスの前に現れた猫は怪我を負っていた
なんとか助けようと再び飼い主を探すがやはり現れず
近所に住むベティから無料で見てくれる動物病院を紹介され
ジェームスは猫を抱えて病院へ向かう

無事に治療が終わり、薬をもらって帰ろうとするが
診療は無料だが薬代は別だと言われ
ジェームスは翌週の食事代になるはずだった
なけなしのお金を使うことに

動物好きのベティの助けを借りながら
ボブと名付けたその猫との生活がスタート
元気になったボブを置いて
ジェームスはお金を稼ぐため町へ出かけるが
ボブはこっそりバスに乗ってついてきた

ボブがそばにいることで
人々がジェームスを見る目が変わり
やがて奇跡のような出来事が...



原作は主人公のジェームスが書いた本
ボブという名のストリート・キャット

ボブ役の猫はなんと本物のボブです
オーディションはしたもののしっくりくる猫が見つからず
結局ボブ本人(猫だけど)が出演することになったそうです
初めて登場するシーンのシリアルの箱をのぞくとことか
病院へ連れていかれるとことか
バスに乗るとことか
とにかくボブの表情が秀逸です
ときどき挿入されるボブ目線の映像も効いていて
ボブの気持ちがわかる気がしちゃいます

世の中の底辺みたいなところにいたジェームスに
手を差し伸べてくれる人はいたけれど
ジェームスが本当に立ち直ることができたのは
自分を必要としてくれる存在ができたことだったようです

He show me what life could be like on the other side.

日本公開:2017年8月

ドラマ「地獄が呼んでいる」(全6話)

ある日突然 なんの前触れもなく目の前に現れる顔 その顔がこう告げる 「お前は○○後の××時に死ぬ  そして地獄へ行くことになる」と その予告から死までの時間は人それぞれ 数年後の人もいれば、ほんの数十秒後の人もいる 予告された時間になると 3体の怪物のような使者が現れ 対象者を暴...