2020年12月19日土曜日

映画「半世界」

小さな田舎町
コウ(稲垣吾郎)は父親の跡を継いで炭焼き職人をしている
ある日、同級生で自衛隊員で北海道にいるはずのエイスケ(長谷川博己)が現れる
離婚してひとりでまたこの町に住むという
空き家状態で荒れ果てていたエイスケの実家を
もう一人の同級生ミツヒコ(渋川清彦)と3人で片付けていると
エイスケが突然泣き出す
過去のトラウマを抱えるエイスケ
彼は何を見てきたのか

稲垣ゴローちゃんの炭焼き職人と
長谷川博己の元自衛官というのが
なんだか似合わなくてミスキャストでは?
と思ってしまったのだけど
実はそこがミソで
コウもエイスケも
似合わない世界でぎこちなく
でも懸命に生きている
そんな姿を見せたかったのかも

エイスケの見えない過去の向こう側にある世界と
コウやミツヒコが暮らすちっぽけな世界
みんなそれぞれの生活に追われながら
何も考えずにバカをやっていたころに思いをはせる
タイムカプセル的に地中に埋められた缶を探すエイスケ
二等辺三角形じゃなく、正三角形だと主張するミツヒコ
「あまったれんじゃないよ」というコウの口グセ
あの頃の自分は何を考え何を感じていたのか

「お前らは世間しか知らない
 世界を知らない」

そう言っていたエイスケが最後につぶやく

「こっちも世界」

コウの奥さん役は池脇千鶴
泣きます
泣かされます
さすがです!

公開:2019年2月

 画像:映画.comより

映画「半世界」公式サイト
予告


2020年12月18日金曜日

ドラマ「きみはなぜ絶望と闘えたのか」

 「光市母子殺害事件」
と聞けば、裁判を戦い続けた遺族の顔を覚えている人も多いのでは
少年法のみならず、裁判での被害者遺族の位置づけや
裁判官の考え方まで変えてしまうほどの大きな影響があった事件

事件そのものも残酷極まりないものだったけれど
その裁判は、遺族をさらに傷つける残酷で理不尽なものだった

このドラマは、事件を追い続けた記者が書いた
同タイトルの著書をベースとしたフィクション
(よってドラマの中の人物名は仮名です)

町田道彦(眞島秀和)はある日仕事から帰ると
部屋に電気はついておらず、居るはずの妻と娘が見当たらない
妻の実家に電話をかけ、何か聞いていないかと尋ねる
義母は何も聞いていないが、娘が急に熱でもだして病院に行ったのではと
出かけるときに持ち出すおんぶ紐やバッグを探してみるよう促す
言われた通り押入れを開けるとそこには変わり果てた妻の姿が...

加害者は18歳の少年
少年法に守られる加害少年の人権
町田が事件の内容を詳しく知ることができたのは初公判でだった
それでも傍聴できただけでましな方だったという
数年前までは、少年審判は被害者遺族は傍聴できないどころか
加害者の名前や事件の内容すら教えられないこともあったという
裁判に遺影を持ち込もうとした町田を制止する裁判所職員
理由を説明しろと食い下がる町田に伝えられた裁判長からの言葉は

「裁判は裁判官、検察官、被告人の三者でやるもの
 被害者に特別なことは認められていない」

いったい裁判は誰のために、何の目的でやっているのか

被害者も遺族も、断りなく実名で報道されるのに
なぜ犯罪を犯した人間の人権だけが守られるのか

死刑の是非についはまた意見が分かれるところ
刑確定の後に北川が被告に会いに行くシーンは
ちょっと意外というか、なぞというか
考えさせられる内容になってます

事件を追う記者 北川役は江口洋介
ドラマ的に主演は江口洋介なのだけど
町田くん役の眞島秀和が、記憶にある本人に少し似ていてとてもリアル
きっと気弱で人のいい普通の青年だった町田くん
日本中の注目を浴びることなど望んでいなかった
ただ普通にあたりまえの生活がしたかっただけなのに

最後の判決の後、喫茶店でのふたりのシーン
胸がしめつけられます

ぼくはただ
家族がいて
ごく当たり前の会話をして
一緒にごはんを食べて
風呂に入って
おやすみなさい
おはよう 言って
一緒に笑ったり 怒ったり 感動して
何にも...何にも特別なことが起こらない時が過ぎて
一緒に年を取っていって
誕生日やクリスマスをお祝いして
それで...

2010年 WOWOWにて視聴
東映公式サイト

2020年12月11日金曜日

映画「真実」

フランスの有名女優が自伝本を出した
タイトルは「真実」
その出版祝いに娘が家族をつれて訪ねてくる
娘はアメリカで脚本家として働いている
出版された本を読んで娘は激怒する
子どもの頃のエピソードは嘘ばかり
そして大事なことは書かれてなかった
良い母になるより、女優を選んだと言い切る母
そんな母が許せない娘

有名女優役はカトリーヌ・ドヌーブ
娘はジュリエット・ビノシュ
監督は是枝裕和

日本人が日本語じゃない映画を監督するってどんな感じだろう?
と思って見ましたが、全然違和感なかったです
そして劇中劇を演じる俳優ってすごいなぁって思います
会心の演技はもちろん、イマイチ納得がいかないという演技
そして演技していない素の演技
それぞれをちゃんと演じ分ける姿に感動してしまいます
それを引き出す監督ってやっぱりすごいのかも

いつもの是枝作品の雰囲気
静かにすすむストーリーの中に
それぞれの感情をじっくりと描く
対立する母娘を取り巻く人たち
母の現夫と元夫、執事のような秘書と、娘の夫
この男たちが大女優とその娘のギスギスした関係を
やんわりじんわりほぐしていきます
母の共演者の女優たちもすてきです

そしてやっぱり母と娘のシーンが良いです
ずっと意地をはっていた母が
娘にちらっと本音を漏らすところ
それこそが「真実」

公開:2019年10月

映画「真実」公式サイト




2020年11月15日日曜日

映画「カツベン」

映画にまだ音も色もない時代
活動写真と呼ばれていた白黒映画には
ストーリーを語って聞かせる活動弁士(カツベン)がいた
外国映画や時代劇に人々は夢中になり
弁士はスターだった
その弁士にあこがれる少年 俊太郎と
女優にあこがれる少女 梅子

ある事件で追われる身となった俊太郎は
映画館に逃げ込んで働かせてもらうことになる
そこで女優になって「松子」と名前を変えた梅子と再会する
何かと嫌がらせをしてくるライバルの映画館と
いざこざ どたばた いろいろあって...

監督は周防義和
俊太郎役は成田凌、梅子役は黒島結菜
主役の2人がかわいくて
劇中劇の映画はこのために作られたオリジナルで
草刈民代や上白石萌音が出てたり
城田優が外国映画の俳優として出てたりw
細かいこだわりにもクスッと笑えて
映画への愛が感じられるホンワカ映画です

竹野内豊がずっこけ警察官だったり
高良健吾がイヤミでスカしたスター弁士だったり
井上真央ちゃんの悪役というか悪女役?とか
モガな衣装もかわいかったー
映像技師の子(成河くん)も良かったです
最後の落ちも好きでした

公開:2019年12月

映画「カツベン」公式サイト




2020年11月3日火曜日

映画「LIFE!/ライフ」

原題: The Secret Life of Walter Mitty

写真雑誌「LIFE」の編集部でネガフィルムの管理者として働くウォルターは
空想癖があり、時折ぼーっと別世界へ行ってしまうが
仕事に関してはまじめで間違いない堅実さで知られていた
ある日、会社の経営者が変わり「LIFE」は廃刊することが決まってしまう
途方に暮れるウォルターのもとに、最終号へ乗せるためのフィルムが
伝説のフォト ジャーナリスト"ショーン"から送られてくる
表紙に使用するように指定された25番のフィルムだけがなぜか見当たらない
このフィルムの行方を確かめるため、世界中を飛び回るショーンを探しに
ウォルターは人生で初めての旅に出る

走り出したウォルターを
雑誌「LIFE」の表紙を飾った有名人たちがを見送る
そこに流れるLIFEのスローガン

TO SEE THE WORLD
Things Dangerous To Come To
to see behind walls
TO DRAW CLOSER
TO FIND EACH OTHER
AND TO FEEL
THAT IS THE PURPOSE OF LIFE

世界を見よう
危険でも立ち向かおう
壁の裏側をのぞこう
もっと近づこう
お互いを知ろう
そして感じよう
それが人生の目的だから

旅先で出会うたくさんの人々と経験が
内気なウォルターを変えていく

地味ながら写真誌「LIFE」のためにまじめに誠実に働き続けたウォルターに
レジェンドのショーンが送ったものとは?

ウォルター役はベン・スティラー
コメディ俳優というイメージですが
地味でまじめなウォルターがはまってました
ショーン役のショーン・ペンの存在感がすごいです
まさにレジェンドという感じ

全体的には地味な映画だけど
まじめにコツコツはたく人に効きそうな映画ですw

日本公開:2014年3月
映画「LIFE!/ライフ」公式サイト


2020年11月2日月曜日

映画「ミュージアム」

新米刑事が吐いてしまうほどのむごい遺体
殺人の凶器は飢餓状態の犬だった
犬の体内から1枚のメモが発見される
書かれていた言葉は「ドッグフードの刑」

被害者を罰するのが目的のような連続猟奇殺人
事件を調べていた刑事 澤村(小栗旬)は、被害者の共通点が
数か月前に同じ事件の裁判員になっていたことだと知る
澤村の妻もその裁判員のひとりだった

妻夫木聡がクレジットされていたことは
公開当時に見て知っていたはずなのに忘れていて
あれー!!ああー!!これが妻夫木くん!?
と途中で思い出して驚きました。知らずに見たらわからないかも。
井浦新かと思ってみてましたww

犯人が被害者を罰する連続殺人といえば
ブラッド・ピットの「セブン」を思い出してしまいます
奥さんが狙われるところもに似てるし
でも、あそこまで宗教っぽくはないです
犯人の背景はさらっとしか説明されていないので
そこは少し気になりました
ふたごの妹との関係も気になります
「序章」っていうのがあるみたいなので
そっちで描かれてるのかな?
それとも原作で描かれてるのかしら?

犯人の設定が特殊すぎてストーリーにリアリティはあんまりないのですが
映像と演技は迫力ありでハラハラドキドキはします
そして連続猟奇殺人事件なので
それなりに激しいシーンが多々あります
見終わったらどっと疲れますw
とにかく小栗旬くん演じる澤村が精神的にも肉体的にももがき苦しむので
それが見どころかもしれません😁

公開:2016年11月

映画「ミュージアム」公式サイト

2020年11月1日日曜日

映画「火花」

お笑いコンビ ピースの又吉直樹の芥川賞受賞作の映画化
売れない漫才コンビ「スパークス」の徳永(菅田将暉)が
熱海の営業先で出会った先輩芸人・神谷(桐谷健太)
言うこともやることもメチャクチャだけど
お笑いに対する真っ直ぐさに惹かれ
徳永は神谷に弟子にしてくれと頼み込む
弟子と言っても、神谷自身も売れない芸人
何か芸を教えることも無く、ただただ時間があれば会って飲んで
時にふざけ、時に真剣にお笑いについて語るだけ
いつまでたっても売れないふたり
後輩たちにはどんどん抜かれる
いつか信じていたはずの自分の芸にも迷いが生じる
自分が何を目指しどこへ向かっているのかわからなくなる
年は容赦なく取る...

売れない芸人たちの葛藤、将来の不安、借金、相方、彼女、守るべきもの
お笑いとは? 芸人とは?

又吉も売れない時代にいろいろ悩んだのかな
なんてことを想像してしまいます
「スパークス」の最後のライブシーンは原作でも一番泣けたところ
すごく良かったです。さすがの菅田将暉。
泣ける感動シーンのあとに登場する神谷さん
原作ではこのオチが(私的には)ダメだと思ったところ
映画はわりとさらっと面白おかしく描かれています
原作より良かったかもw

エンドロールで流れる歌は
まるでこの映画のために書かれたような詩で
ビートたけしが30年も前に書いたものでした。
桐谷健太の歌はそれだけ聞けば味があってよい気がするけれど
その後に登場する菅田将暉の声があまりに良すぎて
桐谷声はただの粗雑な歌に聞こえちゃいます
好みの問題だとは思うけど、私はちょっとダメでした
あくまで菅田将暉推しでw

公開:2017年10月
映画「火花」東宝公式サイト



追記:
Netflixで放送されたドラマ版(林遣都x浪岡一喜)が
さらに泣けるとお笑い好きのお友だちが言っていました

2020年10月31日土曜日

映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

舞台は32年前の架空の町の小さなお店 ナミヤ雑貨店
そこの店主が町の人々の悩み相談を受けている
100点取りたいという子ども
自分の行く道を迷うミュージシャン
不倫相手の子どもを身ごもった女性
客に店を持たせてやるから愛人になれといわれるホステスなど
かわいいものから重いものまで悩みも様々
店のシャッターの郵便受けに差し込まれる手紙
そこから受け取った悩みは
その大小に関わらず真剣に考えてきっちり返事を書く
返事は表の牛乳配達ボックスの中へ

そして舞台は32年後へ
何か事件を起こして逃走中の青年3人組
車がエンストして、偶然逃げ込んだのがこの雑貨店
すでに閉店していて空き家となったこの店で奇蹟が起こる

原作未読です。
エンドロールを見るまで、東野圭吾原作とは知ませんでした
こういう話もあるのですねw
奇蹟が奇蹟とわかるまでに3段階くらいのストーリーがあって
それらが最後に繋がってほっとして、あったかい気持ちになります
この悩み相談は、書かれた答えそのものよりも
誰かがちゃんと話を聞いてくれて、真剣に考えて答えてくれた
ということが大事なんだなーって思いました

3人組のひとり 村上虹郎くんがすごく良かった
一番地味な子を演じてたのは佐藤浩市の息子だそうです

公開:2017年9月


2020年10月30日金曜日

映画「チョコレートドーナツ」(原題:Any Day Now)

1979年 カリフォルニア
ショーダンサーとして働くゲイのルディ(Alan Cumming)
アパートの隣には障がいを持つ少年マルコが
母親とふたりで暮らしていた
母親が男を連れ込むたびに
昼夜問わず部屋の外へ出されるマルコ
ある日その母親がドラッグの所持で逮捕され
マルコは福祉局の職員がどこかの施設へ連れていく

気になりつつも日々の生活に追われていたルディが
夜中に街をひとりで歩いているマルコを発見する
施設を抜け出し家に帰ろうとして迷子になっていた

マルコを引き取って育てたいと奔走するルディと
弁護士のボーイフレンド ポール
たとえどんなにひどい母親でも
実母から子どもを引き離すことは簡単ではない
彼らがゲイであることが、さらにそれを難しくする

70年代に実際にあった話が原作
弁護士、判事、上司、福祉施設の人々
自分をまともだと思っている人が、実は一番やっかいで残酷
自分のものさし、自分の価値観でしかものが見られない人々
自分と違うものを否定し、憎悪し、攻撃する。
最後にポールから届いた手紙を読んだあの人たちは
この問題をどう受け止めたのか?

何が正しくて、何が間違っているのか
子どもにとって最適な環境とはどんなものか
それを判断するのは誰か

悲しいお話なので、泣くのは覚悟して
でもきっと見終わったら人にやさしくなれるはず



http://bitters.co.jp/choco/

公開:2012年4月


原題「Any Day Now」について

"Any Day Now" というフレーズは
劇中でルディが歌う "I Shall Be Released" の
歌詞の中にありました。

Any day now, any day now, I shall be released.

オリジナルはボブ・ディラン。
たくさんのアーティストがカヴァーしていて
シンプルでわりと短い歌詞なため解釈は諸説あるようです。
もともとはRubin Carter事件という冤罪事件の歌で
「今にでも、俺は釈放されるべきだ」と歌っているという説に
説得力があると思いました。

Released は"解放される"とか"自由になれる"とか、そんな感じ。

この映画の中で、ルディはエンディングを少しアレンジしていて

I swear, I swear, my love, we shall be released.

と歌っています。
 "I swear" 
「自由になれるだろう」ではなく
「自由になる、なってやる」と誓うこと。
そして "Any Day Now" というタイトルは
その日が遠い未来じゃなく
今日にでも、今にでも
という強い決意を表しているのかなと思いました。

2020年10月29日木曜日

映画「人間失格 太宰治と3人の女たち」

 「人間は、恋と革命のために生まれてきたのだ」
大ベストセラーとなった「斜陽」の有名なフレーズは
実は愛人が日記にしたためていた言葉だった




「人間失格」という小説の映画化ではなくて
作家 太宰治の晩年を描いたストーリーです。
とはいえ、太宰作品はそもそも私小説っぽいので
リンクするがシーンも多々あります。

監督は蜷川実花。
さすがと言いたくなる「色」のきれいさで
どこでストップしてもきっと絵になるんじゃないかと思うほど。
画面がいちいちほれぼれするほどきれいです。
演出の方は...、やっぱりところどころ芝居くさいというか
「いかにもセリフ」的なちょっと残念なシーンがあったなぁ…と
でも、全体的にはOK👌
前作「ヘルター・スケルター」よりはだいぶよかったと思いますw

映画をみても小説を読んでも
とにかくどうしようもないろくでなしにしか思えない太宰治。
小栗旬が、このろくでもない太宰のろくでなし感を全面に出しつつ
女たちがなぜか惹かれてしまう魅力をうまく醸し出してたと思います。
一見、太宰にだまされ振り回され翻弄されているような女たち。
実は振り回していたのは女たちの方だったのかも?

妻に悪いと言いつつ愛人として生きる決意し
太宰の子を身ごもる静子=沢尻エリカ
愛人の存在を知りつつ
夫を天才と信じて家で待つ妻 美知子=宮沢りえ
妻にも静子にも嫉妬し、太宰を自分のものにするために
死を選んだ富栄=二階堂ふみ

特に沢尻エリカ演じる太田静子という人物は気になりました。
「斜陽」の人。彼女が書いた「斜陽日記」を読みたいと思いました。

突然現れた三島由紀夫=高良健吾!
太宰文学がきらいだと本人に言ったエピソードは
(タイミング違うようですが)実話だそうです。
三島由紀夫作品も読みたくなりましたw

あと、ちょっとしか出てないけど藤原竜也とのシーンも良かったです。

小説を読んでおくとこの映画が楽しめるし
この映画を見ておくと背景がわかってより小説が楽しめる
そんな気がしました。
太宰だけじゃなく、この時代の他の作家の作品も読みたくなりますよ。

http://ningenshikkaku-movie.com/

公開:2019年9月

2020年9月23日水曜日

映画「ブタがいた教室」

(ちょっと古い映画でだいぶ前に視聴済みだったのですが
 今を時めく北村匠海くんが出演していたという情報をキャッチして
 改めて再視聴)

6年生の担任になった新任教師(妻夫木聡)が
着任早々子豚を抱えて教室へやってくる
その子豚をみんなで1年間育てて食べようという

「命の授業」

教頭や保護者の一部の反対がありながらも
好奇心でどんどん前に進むこどもたちに
校長はGOサインを出した
Pちゃんと名付けられた子豚を育てるため
みんなで力を合わせて飼育小屋を作り
家から残飯を持ちより
休みの日も交代で餌をやり
掃除やフンの始末をし
台風の時には小屋の補強をしたりして
いつしかペットと化していく
「食べる」というのが最終目的だったはずが
愛情がわいてしまって食べることに迷いが生じる子どもたちに
卒業というタイムリミットが迫る

実話がもとになった話*
すごくすごく考えさせられる話です
そして最後までとことん話し合う子どもたちがリアル
みんな本気で涙しながら意見をぶつけ合う
どこまでセリフなのかわからない
この授業を受けた子どもたちも
この映画に関わった子役たちも
そしてこの映画を見た子どもたちも
きっと感じることがあるはず

命をいただくということ
その重みをずっしりと感じるお話です

*原案となった話:豚のPちゃんと32人の小学生―命の授業900日https://www.minervashobo.co.jp/book/b48474.html

公開:2008年11月




2020年9月6日日曜日

映画「ジョーカー」

アーサー(ホアキン・フェニックス)は年老いた母親と二人暮らし
小児科の慰問や町の商店の宣伝をするピエロとして働いてる
脳神経の障害があり、突然笑い出したら止まらなくなる
市の施設でカウンセリングを受けていたが
予算カットが原因で施設は閉鎖されてしまい
仕事も、あることが原因でクビになってしまう
そんな時、母親がいつも熱心に書いている手紙を盗み見て
ある"秘密"を知ってしまう
自分のこと、母のこと、父親のこと
今こんなにつらいのは何故なのか?誰のせいか?

「秘密」の真相にたどり着くまで二転三転あって
底なしに絶望していくアーサー
救いがなくつらく重たいストーリーです
内容的に万人には勧められない映画だけれど
「ピエロ」が象徴的に使われている演出と
とにかくホアキン・フェニックスの演技が見事
さすがのアカデミー賞主演男優賞です
圧巻です!文句なし!

本作を見る前に先にバットマンシリーズを見ておくべきか?と
検索して検討したところ、見なくてよいという結論でした
むしろ監督がこの映画を制作するうえで参考にしたと
公言している映画あるのでそっちを見ておくべき、とのこと
その2本が「キング・オブ・コメディ」と「タクシードライバー」です
どちらもロバート・デ・ニーロ主演作です
確かにどちらも本作とつながっている気がします
でもどっちも見てなくてもぜんぜん大丈夫です
「Joker」単体でもうじゅうぶんお腹いっぱいになります!

公開:2019年10月

https://wwws.warnerbros.co.jp/jokermovie/




2020年9月2日水曜日

映画「キング・オブ・コメディ」

Better to be king for a night than a schmuck for a lifetime.
どん底で終わるより一夜の王になりたい

コメディアンになるのを夢みる男ルパート・パプキン
大人気コメディアンであるジェリー・ラングフォードを
トークショー終了後に出待ちしているファンに紛れ待ち伏せる
熱狂して押し寄せるファンの盾となって彼を守るが
その混乱を利用して強引に車に同乗し、ジェリーに自分を売り込む
困ったジェリーはネタのテープを持ってきたら見てやると言って
ルパートを追い返す
だがジェリーに気に入られたと勘違いしたルパートは
テープをもって事務所を訪れる

ここからルパートの行動はどんどんエスカレートし
自分の世界が正しいと信じて疑わず
常軌を逸した行動に出る

このアブない男ルパートを演じるのはロバート・デ・ニーロ
ああ言えばこう言う的な問答の繰り返しで
とにかく強引でしつこくて迷惑で明らかにヤバい人
ろくでもない行動を繰り返し
逆切れでろくでもない事件を起こすのですが
ちょっと引いてみるとなんだか言いようのない哀愁が漂ってて
かわいそうで哀れでうっかり同情しちゃう
こんなやつに同情しちゃいけないと思いつつ
なんかもやもやしたものが残っちゃう
そこが一番アブないとこかも

ルパートが起こした事件の最後に言い放つのが
冒頭に書いたセリフです

「どん底で終わるより一夜の王になりたい」

こんな風に思っているということは
完全に正気を失っているわけではない?
実は全部わかってやっている?
ラストシーンは妄想か現実か
目に光るのはうれしい涙か、悲しい涙か...


日本公開:1984年5月
米国公開:1983年2月




2020年8月10日月曜日

映画「新聞記者」

ある日、新聞社に匿名のファックスが届く
大学新設計画に関する書類と謎の羊の絵
発信元を探る女性記者
情報操作するよう命じられるエリート官僚
計画の裏に隠された秘密とは?

松坂桃李が演じるエリート官僚が務める内閣情報調査室は
実在するものの取材がまったくできなかったという謎の組織なので
あそこで行われてた情報操作的なところはフィクションですが
実際にあった官僚による公文書改ざん問題と関係官僚の自殺や
レイプを告発した被害者女性に対するセカンドレイプなどが
形を変えて描かれているので
フィクションであることを忘れてしまいそうになります
本当にこういうことしてるんじゃないかと疑いたくなります

内容も演出も雰囲気も暗めで重め
やりきれない気持ちでいっぱいになるけれど
でもこの映画を見たことにより
実際の事件の方に興味がわいて
ちゃんと調べたくなります
なのでそれだけでこの映画を作った意味も、見る意味もあるかも

今年(2020年2月)のアカデミー賞で
最優秀作品賞/主演男優/女優賞の3冠を獲得した作品
なのにあんまり話題にならなかったのは
内容が反政府っぽいから宣伝されにくかったのか
それとも単に演出が地味すぎるからかな?

女性記者役は韓国出身のシム・ウンギョン
アメリカ生まれの日系人という役でしたが
なんでそういう設定なのかな?と思ったら
引き受けてくれる女優が誰もいなかったからとか
確かに反政府的ではあるけれど
それでも関係なくアカデミー賞取れるなら
この役やりたかったとくやしがっている女優が
実はけっこうたくさんいるのかも

私的には松坂桃李の上司役の田中哲司に
助演男優賞あげたい感じです
ものすごくこわいよー

公開:2019年6月

https://shimbunkisha.jp/



映画「孤狼の血」

舞台は暴力団対策法成立前の1988年(昭和63年)の広島
対立する二つの暴力団組織と
その間に入って脅したりなだめすかしたり
独自の方法でなんとか抗争を抑えようとするベテラン刑事 大上(役所広司)と
県警から赴任してきた大学出の若きエリート刑事 日岡(松坂桃李)

ある日暴力団組織の金庫番的金融会社の社員が失踪する
日岡は大上のめちゃくちゃな捜査方法に疑問を持ちつつも
圧倒的な行動力に振り回され巻き込まれていく

その年のアカデミー賞で最優秀主演男優賞を役所広司が
最優秀助演男優賞を松坂桃李が受賞していますが
ストーリーからみると逆じゃないの?と思ったり

役所広司や石橋蓮司やピエール瀧やら強面でいかにもな感じの人たちから
竹野内豊や中村倫也など一見優男なタイプの俳優さんたちまでが
予想以上にぶちギレててこわいこわい
まあとにかくあっちこっちで誰もかれも暴れまくり
あまりにエグすぎて、映画館で見なくてよかったと思いましたw

見終わった後どっと疲れます
薬局に勤めてる女の子の阿部純子ちゃんだけがちょっと癒しです

公開:2018年5月

http://www.korou.jp/



2020年7月31日金曜日

映画「365日のシンプルライフ」

ヘルシンキに暮らす26歳の青年ペトリ
”幸せを見つけるために” ある実験を始める
家財道具から洋服まで持ちモノすべてを倉庫へ
そして倉庫から1日に1個だけ持ち帰る
それを1年間続ける
1年間 何も買わない

とにかくすべてを倉庫へ入れたので
初日は空っぽのアパートから素っ裸で倉庫へ
途中のゴミ捨て場で新聞紙を拾って隠して走る
ヘルシンキ...寒そうw
そもそも倉庫からはどうやって帰ったの?という疑問w
その辺は完全なドキュメンタリーじゃないけれど
ドキュメンタリー風の映画
自撮りのところが大部分だけど
カメラマンが撮っているところもあります
でも登場人物はリアルな友だちや家族で
ほぼ呆れながらでも笑いながらこの"実験"に付き合ってくれる
初日に選んだのはコート
全身隠せるし、防寒にもなるし、ブランケット代わりにも
なかなか賢い選択だけれど
素っ裸にコートを着て裸足で帰る姿は...完全に危ない人w

ペトリはこの実験を始める前におばあちゃんに相談する
ものがない時代を経験しているおばあちゃんは
「本当に必要なものがわかるはず」と賛成してくれた

最初は不便ながらもその過程を楽しんでいるように見えたけど
ある程度そろってしまうと、もう欲しいものがわからなくなる
何も欲しくない
まだまだものがぎっしり詰まった倉庫をみて途方に暮れる

ペトリは再びおばあちゃんに会いに行く
「持っているモノの多さで幸せは計れない
 人生はモノでできていない
 別の何かが必要だよ」

トラブルあり、友情あり、出会いありの1年間
ペトリがこの実験で見つけたものは?
おばあちゃんの言葉と笑顔がこの映画のキモです

公開:2018年8月




2020年7月30日木曜日

映画「羊の木」

田舎の小さな港町
市役所職員の月末一(つきすえはじめ=錦戸亮)は
上司から移住者の受け入れを命じられる
6名の移住者は全員仮釈放中の受刑者
それぞれお互いのことは知らない
それぞれの就職先へも告知はない
不安を感じつつも、新しい生活を始める移住者と
普通に接しようと努める月末
そんな中、港で死体が見つかる
事件か?事故か?移住者の誰かが関係しているのか?

漫画が原作だそうで、言われて見れば
劇画タッチの絵が合いそうな舞台設定です
誰もかれもがあやしい
中でも松田龍平のあやしさは群を抜いています
普通に普通のこと言ってるのになぜかすごくあやしい
いかにも悪キャラな北村一輝と対照的に
静かな言動の中に狂気が見え隠れする
他の受刑者は原作ではもっと詳しく書かれているのかもしれませんが
映画の中には入りきらなかったようでボヤっとしています
あ、でも理髪店とクリーニング屋さんの話はちょっとイイ感じです
清掃員の市川実日子が浜辺で拾ったプレート
それが映画のタイトルになっている「羊の木」の絵なのだけど
最後まで意味は解らなかったです
見た人それぞれで考えてということらしいですが

とにかくあぶない人の中でひとり奔走するお人よしの月末=錦戸くん
キャスティングは文句なしでした
途中までとにかくあやしくて
そのイヤな予感がだんだん後半に向けて現実になって
すごくドキドキするのだけど
結末が…ちょっと…うーむ…という感じでした
漫画で読んだら面白いのかな?

公開:2018年2月




2020年7月29日水曜日

映画「劇場」

「一番会いたい人に会いに行く
 こんな当たり前のことがなんでできなかったんだろう」

芸人作家 又吉直樹の初の恋愛小説
の映画化

永田(山崎賢人)は友人と作った小さな劇団で脚本を書いている
ある日、ショウウィンドウで同じ絵を眺めていたサキ(松岡茉優)を
しつこく追いかけ声をかける
永田のひとめぼれから始まったはずのふたりの関係は
いつの間にか逆転する
わがままで奔放な永田と
それを笑ってすべて許してしまうサキ
友人に誘われて見た別の劇団の芝居に圧倒され
自分の才能を疑い始め、不安と焦りで荒れる永田
その永田の才能を信じるサキも
日々の生活に追われ、荒れ始める

山崎賢人、良かった
顔が良すぎてぜんぜん悪い人に見えないんだけど
どんなにひどいことしても、汚い服着てよれよれでも
どこかかっこよくてサキが嫌いになれないのも分かるw

そして松岡茉優ちゃん、かわいい
頭がいいのか悪いのか、ビミョーな感じ
いつもふわふわ笑ってて、でもどこか寂しそうで
サキにぴったりでした。

永田のしゃべりは、ときどき関西弁になる。
その言い回しとか、言葉遣いとか、なんとなく又吉っぽい気がしました。
ひどいことたくさんして、わがままばっかり言ってるのに
話しかけるときは「サキちゃん」と"ちゃん"付けにするのが
特に又吉っぽかったかも。

原作読みたいと思わされました。

公開: 2020年7月



2020年6月14日日曜日

本/映画「世界から猫が消えたなら」川村元気著

「人間が猫を飼っているわけじゃなくて
 猫が人間のそばにいてくれているだけなのよ」

再々読了。つまり3回目。

最初に読んだのは正確にいつかは覚えていないけど
まだ父が健在で、でも文庫版をB●●KOFFで買っているので
たぶん2015年の初めころ。

2度目に読んだのは映画が公開されたあと。
その間に父や友人が亡くなったりして
最初に読んだ頃よりひとつひとつの言葉が心に染みました。

そして、猫を飼い始めた今。
そのぬくもりを肌で感じることができる存在が目の前にいる。
それが失われることを想像しながら読むというのは
今までと比べ物にならない感情の動きがありました。
電車で読んでいて思わずうるうる
マスクがあってよかったと、この時ばかりは思いましたw

大事なものを失ったことがある人ほど
この本に込められた思いが実感できると思います。

以下、2017年に映画版を観たときの感想です。

***
「何かいい物語があって それを語る相手がいる
 それだけで人生捨てたもんじゃない」

主人公とその親友、そして元カノが映画好きの設定で
実在の映画のいいセリフがいいところで使われています。
上のセリフは「海の上のピアニスト」から。
原作をぱらぱらっと探してみたけど
このセリフを語るシーンは見当たらなかったので
映画用に加えたシーンかも。
映画の中で2回出てきます。2回目が泣けます、、、。
「ライムライト」のセリフは原作にも登場します。

原作既読。原作とは少し主人公の雰囲気が違うかも。
映画の方が少しキレイめにまとまってたような。
原作の子はもう少しチャラい感じです。
佐藤健くんの方は少し落ち着いてておとなしくていい子。
彼が猫を抱くシーンがたくさんあるけどいちいちツボですw
限りある命とか、人との関わりの大切さとか
当たり前すぎて語るのが恥ずかしいようなテーマだけれど
それでもやっぱりお母さん、親友のツタヤ、元カノ、猫のレタスとキャベツ
そしてお父さん、それぞれのシーンがやっぱり泣けてしまいました。

お母さんの手紙は反則です。
「いつまでもあなたの素敵なところが そのままでありますように」

映画、公開: 2016年5月
http://www.sekaneko.com/



本、初回発行: 2012年10月


2020年5月17日日曜日

映画「その日のまえに」

原作は重松清の同名短編小説集。未読。

余命を宣告された妻(永作博美)とイラストレーターの夫(南原清隆)
"その日"の前に、ふたりは新婚時代に住んでいた町を訪ねる
そこで出会う人、すれ違う人、後に会う人
監督が大林宜彦だからなのか
映像が独特でレトロっぽい昭和な感じ
実在するのか、幻覚なのか、空想なのか
不思議な人たち

"その日"に向けていろいろと準備をするをする妻
わかってはいても受け入れがたく日々の雑務に追われる夫
"その日"のことを知らされず母の帰りを待つ子どもたち
"その日"にかけつける両親と
"その日"のあとに渡される手紙

劇中でクラムボンと名乗るストリートミュージシャンが
チェロで弾き語る歌がすてきです
歌の中で語られる宮沢賢治の妹とし子と
同じ名前の妻とし子の思いが重なります
「あめゆじゅ とてちて けんじゃ」
じゅ文のような言葉に秘められた思いとは…

サイドストーリーは原作の短編集から
昭和レトロな子どもたち
喫茶店でのちょっとした事件
花火大会に集う人々
ちょっとちぐはぐな感じはわざとなのかな
キャスティングが少し残念な気がしました

あとイラストレーターの夫が劇中で
原作者重松清の「きよしこ」の表紙を描いているシーンがあったので
たぶん劇中に登場するエコバックや花火のポスターも
同じ人が描いているようです
ストーリーとは関係ないみたいですけど

公開:2008年11月

 画像:映画.comより



2020年5月10日日曜日

映画「チャーリー・セズ/マンソンの女たち」

WOWOWで
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
が放送になり、これに合わせる形で配信されています。

タイトルはカタカナだと意味が分かりにくいですが
原題は Charie Says です
事件後に逮捕された女の子たちの回想と
彼女たちを更生させるために話を聴き続ける教師の話
彼女たちはとにかくチャーリーの話ばかりする
チャーリーはこう言う、チャーリーはこうだ
チャーリーは、チャーリーは、チャーリーは、、、と

チャーリー = チャールズ・マンソンという男
彼を崇拝し、ともに暮らす女の子たち(男の子も数名)
住まいにしている元撮影所のパーン牧場
チャーリーの目指すものとは?

なぜ女の子たちはチャーリーに惹かれていくのか
シャロン・テートの事件はなぜ起きたのか
テリー・メルチャーとテッド・ウィルソンが
彼とどうかかわっていたのかもこの映画を見るとわかります。
なので「ワンス・アポン...」の予習用としておすすめの映画です。



 画像:映画.comより

 画像:映画.comより

2020年5月2日土曜日

映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」

「この世界はさ
 本当は幸せだらけなんだよ」

 画像:映画.comより


教師の正規雇用を目指す非常勤講師 七海
生徒にからかわれほど声が小さくおとなしい性格
なかなか言えない本音をネットでつぶやいていた
そんなネットで知り合った鶴岡徹也
彼もまた教師ということもあり
なんとなく付き合い、結婚が決まる
ネットで買い物をするように、あっさりと
結婚式の話は進むにつれ
七海の側に参列する親戚がいないことをいぶかしむ徹也
親が離婚していることが言えないまま
七海は安室(アムロ)に、結婚式の親戚として
代理出席をするサービスがあることを知らされる
安室もまたネットで知り合った人物だ
このサービスを利用して無事に結婚式を終えた七海だったが
その後、七海のもとに徹也の浮気相手の恋人だと名乗る男が現れる
訳が分からぬまま
あっという間に人生の歯車がはずれ
七海はひとり路頭に迷うことになる
途方に暮れる七海の前にタイミングよく現れる安室
問題を解決し、仕事や住むところまで世話をする
彼は何者なのか

七海役は黒木華
このストーリーそのものが彼女をイメージして書かれたもの
安室の綾野剛と、七海が出会う里中真白役のCocco
この3人の不思議で奇妙な関係
公開当時話題になってたウェディングドレスのシーンは
やっぱりすごくよかったです

想像してた話とはぜんぜん違っていて
タイトルの意味、私はちょっとわからなかった
周りに振り回されながら
いつの間にか全く違う自分になっている
っていうところがリップヴァンウィンクルなのかな…

公開:2016年3月

映画「食べる女」

古本屋兼作家のトン子
トン子の幼馴染で小料理屋の女将 美冬
彼女の周りのたくさんの女たちが集う
恋に仕事に悩む女たちが
集って料理を作ってみんなで食べる
泣いても笑っても怒っても
ちゃんと作って しっかり食べる
そして元気になっていく

「自分で稼いでそのお金で
 自分でご飯を作って食べる
 きっと当たり前のことなのに
 私 すごくうれしいです」
 
料理などしたことがなかったマチルダが
自分で作ったみそ汁をトン子にほめられるシーン

だ か ら 手抜きをするな 女たちよ

前田あっちゃんはこの映画で勝地涼くんに会ったのね
(涼くんゲイ役だけどw)

今は見ることができなくなった沢尻エリカちゃんと
今を時めく広瀬アリスちゃんが
出血大サービスのエロさですwww

公開:2018年9月

 画像:映画.comより

映画「湯を沸かすほどの熱い愛」

田舎町の銭湯
店主は湯気のごとく蒸発中
残された娘は学校でいじめと闘い
母は末期のがんと診断される

探偵を使って探し出した店主は
一緒に暮らしていたはずの女に逃げられ
幼い女の子とぎこちなく暮らしていた

残りの人生をかけて全力で愛を注ぐ母に宮沢りえ
その愛に全力で応える娘は杉咲花
どこまでも頼りなくて情けない店主にオダギリジョー
妻に先立たれ、まだ幼い娘を連れあるく探偵 駿河太郎
旅先で出会うチャラい青年 松坂桃李
俳優さんたちがそれぞれすごくよかったです
やっぱりキャスティングって大事

母の抱える過去と秘密
全てがわかるシーンはやっぱり泣けます
最後の最後はちょっと
えええ、それはダメでしょっていう結末なんだけど
ダメですよねーって言っちゃってるんで
ま、いいかw

公開:2016年10月

 画像:映画.comより

公式サイト

2020年4月26日日曜日

本「イリュージョン」リチャード・バック著

著者はリチャード・バック
かもめのジョナサンで有名な人

初めて読んだのはン十年も前
もう何度読み返したからわからない
ストーリーはとても静かに展開するのだけど
読了後は価値観が一変してしまうような衝撃をうけた
目の前のものが本当に存在しているのか疑いたくなる感覚

イントロダクションは不思議な救世主の話
本編は著者を思わせるリチャードという名のパイロットの話
彼は旅をしながら、滞在先の人々を飛行機に乗せ
短い遊覧飛行をすることで生計を立てていた
その旅の途中で出会うもう一人のパイロット
しばらく共同で仕事をするうちに
彼の不思議な力を目の当たりにする
彼はいったい何者なのか

翻訳は村上龍
この翻訳がかなり独特

第11章の冒頭

(原文)
You are never given a wish
 without also being given the power to make it true.
You may have to work for it, however.

(村上龍訳)
ある願望が君の中に生まれる。
その時、君はそれを実現させるパワーが
同時に在ることに気付かねばならぬ。
しかし、そのパワーの芽は、
きっとまだ柔らかい。

パワーの芽がまだ柔らかいなんて訳
凡人にはちょっとまねできない
と、思う

2020年4月20日月曜日

映画「母さんがどんなに僕を嫌いでも」

子どもの頃の母の思い出
きれいで、いい匂いがして
でもどこかさびしそう

太っていて、どんくさいタイジは
完璧主義の母には受け入れがたい存在だった
身勝手な都合で一時的に施設に預けられ
連れ戻されたあともまた虐待が繰り返された

少し大人になったタイジは
ある日、キレた母から絶望的な言葉を浴びせられ
とうとう家を飛び出し
新しい生活を始める
うまくやれること、やれないこと
虐待の記憶が心と体に染みついて
作り笑いがやめられない

そんな時、以前家の工場で働いていた"ばあちゃん"と再会する
病で残された時間があまりないばあちゃんが
タイジにひとつだけお願いがあると言う
「たいちゃんには本当に笑ってほしい」

タイジを心配し続けるばあちゃんと
作り笑いの後ろの本当のタイジに気づいてくれる友人たち
彼らの存在に癒され、母の秘密を知ったとき
タイジはまた母と向き合う決意をする

これも実話だというのがまたびっくりでした

タイジ役は太賀(昨年仲野太賀に改名)
いい役者さんですね
この役に他の人はもう考えられないくらいぴったりでした

公開:2018年11月

 画像:映画.comより

2020年4月19日日曜日

映画「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」

おもしろい!

もう理屈抜きで榮倉奈々ちゃん演じる奥様ちえちゃんの
全力の死にっぷりが文句なくおもしろい!

日に日に疲弊していくだんな"じゅんさん"=安田顕に反して
観客として見ているこっちは毎回大ウケです
確かにこれが毎日だと疲れるかもしれないがw
これ、元ネタはYahoo!知恵袋に悩み相談として
実際に投稿されたものだというのが驚きです

最初の結婚が3年でダメになりバツイチだったじゅんさんは
ちえと再婚する際、3年目にお互いの気持ちを確かめ合おうと約束していた
その3年目を目前に突然始まった妻の死んだふり
なぜちえは毎日こんなことをするのか?
何を訴えているのか?

とにかくこの二人の夫婦がかわいくておもしろい
すごく変だけど、すごく普通
なので余計なこと考えずに楽しめて笑えて泣ける
あったかいお話です

「月が綺麗ですね」

 画像:映画.comより
公開:2018年6月

2020年4月18日土曜日

映画「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」

原題「Rebel in the Rye」

ジェリーは作家を目指す大学生
反抗心が強く皮肉屋で周囲とそりが合わず転校を繰り返していた
文芸誌「Story」の編集者でもあった講師バーネットとの出会いで
彼は"書くこと"にのめり込んでいく

Are you willing to devote your life to tell the stories
knowing that you make it nothing returned?
君に 生涯を賭して物語を語る意思はあるか
何も見返りが得られなくても

バーネットからのこの問いかけの答えを探しながら
戦争に巻き込まれ、それでも書き続け悩み続ける
戦争で心を病みながら書き続けた彼の作品は
徐々に大きな雑誌に掲載されるようになる
新しい編集者との出会い
書き換えを要求する出版社との争いを経て
出版された物語若者に絶大な支持を受け
大ベストセラーとなるが
今度はその異常なまでの人気に悩まされることに

ジェリーの才能をいち早く見抜いていたバーネット
彼がいなかったら作家サリンジャーは生まれたなかったかも
疎遠になっていたバーネットがジェリーに会いに行くシーンが
とても印象に残りました
その作品の魅力も、晩年の隠居生活の理由も描かれていて
きっと映画を見た後に、読んだことある人は読み返したくなる
読んだことない人は読んでみたくなるんじゃないかな

日本公開:2019年1月

 画像:映画.comより

予告編

2020年4月16日木曜日

映画「おくりびと」

日本アカデミー賞で最優秀作品賞
本家アメリカのアカデミー賞で外国語作品賞
肩書の派手さに反してとても静かでゆったりとした作品です

主人公小林大吾はチェロの奏者
所属していたオーケストラが急遽解散することになり
実家のある山形で暮らすことにする
母が亡きあと、実家は空き家になっていた
新聞で見つけた「旅のお手伝い」という求人広告
てっきり旅行会社だと思って面接に行ってみると
募集していたのは納棺師という遺体を棺に納める仕事だった

初めはいやいやで、すぐにでもやめたいと思っていた大吾も
自分を強引に連れまわす社長の仕事ぶりと
それぞれの死者とその家族を見つめていくうちに
次第に気持ちに変化が現れる
大吾の仕事を文字通り忌み嫌っていた妻や同級生も
だんだんと変わってくる

納棺の儀
そこで示すご遺体への敬意と配慮
その儀式を通じて、静かに、でも確実に死を受け入れていく遺族
大吾が奏でるチェロの響きと納棺の儀式の所作が
流れるように美しかった

公開はもう12年も前なんですね
あれから自分も父を見送ったりしたので
初めて見た時とまた違った感動がありました

「石」のエピソードが泣けます

 画像:映画.comより

公開:2008年9月

2020年4月15日水曜日

映画「しゃぼん玉」

http://www.shabondama.jp/
原作は乃南アサの同名小説。未読。

ひったくりを繰り返し
とうとう人を刺してしまって逃亡中の"イズミ"が
山道に倒れたバイクを見つける
鍵が付いたままのそのバイクを盗んで逃げようとしたときに
けがをして道端に倒れていたバイクの持ち主の"ばあちゃん"が声をかける
何故か言われるがままにばあちゃんを助け
イズミをばあちゃんの孫と勘違いした近所の人たちに
あれこれ世話を焼かれ、逃げられなくなるイズミ
ばあちゃんや近所の人やそこで出会う人たちとの交流で
自暴自棄だったイズミの心が少しずつ変化していく

イズミ役は林遣都
ばあちゃん役は市原悦子、最後の出演映画だそうです
市原悦子の独特の声、話し方、存在感
そんなことあるわけない、というちょっと出来すぎな話なのですが
何故か"ばあちゃん"の圧倒的なリアリティで
イズミと一緒にばあちゃんのペースに巻き込まれてしまいます
突然現れたばあちゃんの息子とのやり取り
「ぼうはええ子」と繰り返しイズミの頭をなでる
その時々のばあちゃんの思いに胸が詰まります
特に、走り去る車をただ見送るばあちゃんの姿は
それだけでこの映画見る価値ありかも

 画像:映画.comより

公開:2017年3月

2020年3月22日日曜日

映画「ギルバート・グレイプ」

 原題「What's Eating Gilbert Grape」


 画像:Yahoo!映画より

町中が顔見知りのような小さな田舎町ギルバート(ジョニー・デップ)は
雑貨店で働きながら家族4人で暮らしている
夫の自殺のショックで引きこもりになり巨大化してしまった母
母の代わりに家事を担う姉と、高校生で反抗期の妹
そして重度の知的障害のある弟アーニー(レオナルド・ディカプリオ)

 画像:Yahoo!映画より

家族と田舎町の人々とのしがらみの中で
何の希望もなくただ日々をやり過ごしていたギルバートの前に
祖母とともにトレーラーで旅をするレベッカ(ジュリエット・ルイス)が現れる
永遠に何も変わらないように見えていた暮らしが少しずつ変わり始める

 画像:Yahoo!映画より

今さらあらすじを書くのもおこがましいほどの不朽の名作
印象的なシーンもたくさんあるけれど
いつもアーニーを"my sunshine"と呼ぶ母が
ギルバートに
"You're my knight in shimmering armor."
というシーンが好きです。

"shining"じゃないのかと聞きなおすギルバートに
改めて "shimmering" だと言う母
キラキラ光るとは違ってちょっと頼りなく、でも確かに優しく光る

"You shimmer, and you glow."

そしてやはり
何度観てもこの映画のディカプリオはすごい!

 画像:Yahoo!映画より

まだ大人になる前のディカプリオ
天才子役っぷりが見事すぎて何も言えない!
(当時19歳でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました)

日本公開:1994年8月

2020年3月20日金曜日

映画「彼女を見ればわかること」

原題「things you can tell just by looking at her」

5つのショートストーリー
母の介護をしながら恋人の電話を待ち続ける産婦人科医
妻子ある男性と付き合っている銀行の支店長
近所に越してて来た男性に興味津々のシングルマザーの絵本作家
死を目前にした恋人と暮らすレズビアンの占い師
盲目の妹と暮らす刑事

年齢も職業も生き方もバラバラな女性たち
生と死、出会いと別れ、エリートとホームレス、障害者と健常者
彼女たちが向き合うさまざま出来事が
淡々とだけれど丁寧に描かれていて
一見正反対に見える思いにも、なぜかそれぞれに共感できます
5つの別々のストーリーがちょっとずつつながっていて
そのつながり方もさりげなくていい感じ
エンディングへのつなげ方も好きでした

初めて見たのはもう15年以上前かな?
当時夢中でみていた「アリーmy Love」の
キャリスタ・フロックハートが出ているという理由で
深夜に放送してたもの録画してみたのが最初だったような気がしますが
他4人の女優たちはもちろん、キャリスタの恋人役の女優さんや
盲目の妹役のキャメロン・ディアスもいいです
ホリー・ハンターはアカデミー賞とった「ピアノ・レッスン」より
こっちの方が好き

アメリカ公開は2000年なのでもう20年も前の映画ですが
あまり古さを感じない(女医さんの電話の子機が巨大な以外は(笑))のは
人生における悩みとか葛藤とかって不変なのかも

日本公開:2001年5月

2020年3月1日日曜日

本「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」ブレイディみかこ著

"ぼく"はイギリス在住の中学生
母親が日本人、父親は白人、見た目はアジア系
祖父母が九州に住んでいるので
日本に行ったことはあるが日本語はほとんど話せない
本のタイトルはこの"ぼく"が
自分のアイデンティティについて感じたことを表したもの

本書はこの"ぼく"の母親 (=異国で暮らす日本人) が
人種の違う夫と
ふたりをかけ合わせた息子との3人の生活
学校や地域社会での経験をつづったエッセイです

生まれ育った国とは違う国で生きていくこと
人種、国籍、生活習慣、ものの考え方が違う人々との生活
理解できること、できないこと
日本を出てみないと見えないことがある
でもその反面
どこの国にいても
人は同じように悩んだり、人とぶつかったりして
いろんなことを感じながら
手探りで生きていくんだなぁ
なんてことを思いました

映画「女王陛下のお気に入り」

原題:The Favorite

18世紀の英国
女王アンは体調が思わしくなく
側近のモールバラ侯爵夫人サラが
女王の"お気に入り"として公私にわたり面倒をみていた
そんな中、サラの遠縁であるというアビゲイルが
宮殿での職をもとめて訪ねてくる
元は貴族であった彼女は、父親の借金により
身売り同然に奉公に出されていた
そのどん底の召使から、あらゆる手を使って
女王のお気に入りまで上り詰めていくアビゲイルと
彼女の台頭に自分の立場を脅かされ
必死に蹴落とそうとするサラとの壮絶な戦い
そして"お気に入り"の二人が
自分をめぐって激しく争うことを楽しむ女王

アン女王役のオリヴィア・コールマンが
アカデミー賞の主演女優賞を獲得
映画賞の主演の定義はいつも謎
話の中心は王女よりも"お気に入り"のサラとアビゲイルで
3人の女優の演技がとにかくすばらしかったので
主演女優賞はレイチェル・ワイズとエマ・ストーンにもあげたい感じ

喜怒哀楽、憧れ、嫉妬、優越感、屈辱
あらゆる感情を瞳や眉や口角など
顔のパーツひとつひとつのほんのわずかな動きで表す
視線の動かした方と、それを撮影するカメラの角度も絶妙

女王は中でも一番地味だったけど
後半どんどん体調が悪くなって
おそらくは脳梗塞で半身に麻痺がでてくるのだけど
手足だけじゃなく、顔の半分に現れる麻痺と
その話し方が怖いくらいリアルでした

公開:2019年2月

 ポスター:映画.comより

2020年2月29日土曜日

映画「22年目の告白 -私が殺人犯です-」

時効が撤廃される法律が施行される前日に
時効が成立してしまった連続殺人事件
その事件から22年後、自分が犯人だと名乗る男・曾根崎が現れる
「はじめまして、私が殺人犯です」という衝撃の記者会見
犯行を記した告白本を出版し、つぎつぎとメディアに取り上げられ
告白本はベストセラーとなり日本中の注目の的になる
当時事件を追っていた刑事・牧村は
犯人にただならぬ恨みを持つ被害者遺族を気遣い訪ね歩く
同じく当時から事件を追っていたジャーナリストの仙堂は
自身がキャスターを務めるニュース番組に曾根崎を出演させることに...

犯人・曾根崎は藤原竜也
刑事・牧村は伊藤英明
ジャーナリスト・仙堂に仲村トオル

私的には伊藤英明が良かったです
22年分の時間差、若手刑事とベテラン刑事の雰囲気をちゃんと演じ分けてて
彼の視点で事件を見ていくことでストーリーにのめり込めました
元々は韓国のアクション映画がベースだそうですが
時効に関する法改正などをからめて日本仕様にリメイクされたとか
自宅で見てたし、ほとんど予備知識はなかったので
「えー!そういうことなのー!」と思わず声にだして言ってしまいました
個人的に「このミステリーがすごい」賞をあげたいくらいw
なので内容については何も言えないのだけど
ちょっとえぐいシーンもあるし
面白かったとか、良かったとかって言えない内容だけど
スゴイの見たって感じです

公開:2017年6月

 
 ポスター:映画.comより

2020年2月12日水曜日

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」

原作は「ユリゴコロ」と同じ沼田まほかる
56歳でデビューした遅咲きの作家で
発表されてる作品は少ないにも関わらず
湊かなえと並ぶ「イヤミスの女王」と呼ばれてるとか
(イヤミス=読んだ後にイヤな後味が残るミステリー)
2017年公開された2本の映画が2本とも
翌年2月のアカデミー賞をにぎわせました

自分を捨てた男を忘れられず、何をする気力も無く
ただ不機嫌を撒き散らしながら生きる女、十和子
そんな十和子とともに暮らし
面倒見ることだけが生きがいのような男、陣治
面倒を見てもらいながらも、彼を愛することが出来ず
十和子はふらふらと他の男に惹かれていく
ただ、ろくでもない生活はろくでもない男を引き寄せる
そんな男に振り回される十和子を守るため、奔走する陣治
ある日、職場で殴られたという陣治が
風呂場で血のついた作業服を洗っている
その背中を見て、十和子の頭をふとよぎる記憶
前にもこんなことあった?
封印された記憶とは・・・

十和子役は蒼井優
なんだか腹が立つほど色っぽい
そして彼女を守るために必死な男に阿部サダヲ
情けないほど必死な姿の中に
うっすら見え隠れするアブナイ一面
十和子が忘れられない男に竹之内豊
新しく現れる男に松坂桃李
このふたりにろくでもない男役を演じさせるという
贅沢っぷりですw
途中まではとてもいい男だからね
だまされちゃうかもね
出てくる人たちがみんないろいろ間違ってるダメな人たち
誰にも共感できない
同情もできない
そして最悪の結末へ
「あなたはこれを愛と呼べるか」
というのが映画のキャッピコピー
確かに、これはどうだろう?
どれもこれもいろいろ間違えすぎている愛の形です

公開:2017年10月

 映画「彼女がその名を知らない鳥たち」公式Twitterより

映画「ユリゴコロ」

原作は沼田まほかる著の同名小説

婚約者が突然失踪してしまった男・亮介 (松坂桃李)
母は亡くなっていて、実家には父親がひとりで住む
ある日、実家を訪れていたときに古いノートを見つける
そこに書かれていた殺人者の告白のようなストーリー
誰が書いたのか?
内容はフィクションなのか?事実なのか?
父親に確かめることも出来ず
ただとりつかれたようにそのストーリーを追う

ノートのストーリーと現実の話とのつながりは
「そんな偶然ないだろー」という無理やり感はあるのですが
繋がったときに「そういうことか!」と納得してしまいました

おいしそうなオムレツと"ひっつき虫"がカギ
(ひっつき虫。子どものころは空き地にたくさん生えてて
セーターとかにくっつくとげとげに覆われた実っていったら伝わるかしら?)

吉高由里子はこういう何を考えてるかわからないアブナイ人の役がはまります
無表情の中に狂気が潜んでる感じ
全部のナゾが解けたとき
キャスティングにはちょっと感心します
よく探したなーってw

「血」がひとつのテーマでもあるので
流血シーンが苦手な方にはおすすめできません

公開:2017年9月

 ポスター: 映画.comより

2020年2月11日火曜日

映画「グリーンブック」

原題:Green Book
2019年2月発表のアカデミー賞で
作品賞、助演男優賞、脚本賞の3冠獲得

主演はヴィゴ・モーテンセン
あの「ロード・オブ・ザ・リング」で
ストライダー=アラルゴン役で有名になった人
でもまったくの別人と化していますw
あのかっこよさは封印して
見事に中年太りの品の悪いおじさんになってます
(余談ですけど、かっこいいヴィゴさんみるなら
「オーバー・ザ・ムーン (原題:A Walk on the Moon)」
 がおすすめ)

ヴィゴが演じるトニーは
家に水道修理に来た黒人配管工が水を飲んだグラスを
ゴミ箱に捨てるほどの黒人嫌い、偏見の固まりのような人
そんなトニーが
黒人天才ピアニスト、ドクター・ドン・シャーリーの運転手として
アメリカ南部(ディープサウス)の演奏ツアーに同行することになる
ともに旅をするうちに
ドクターの才能と、孤高に偏見と闘う姿を目の当たりにして
トニーは変わり始める

驚くのは北部と南部の黒人の扱いの違い
NYではカーネギーホールの上の高級アパートで
まるで王様のように暮らしていたドクターが
南部ではあらゆる差別的扱いを受ける
ツアーをするにあたりトニーが手渡されたのは
「グリーンブック」と称される黒人専用の旅行ガイドブック
黒人が安心して過ごせる場所としてリストされているのは
黒人専用と書かれた古くて汚い小さなモーテルばかり
食事ができるところはダイナーや場末のバーのような店
コンサートに来る観客はみな白人の富裕層なのに
彼らと同じトイレを使用することは許されない
同じレストランで食事をとることは拒否される、という矛盾
北部では彼のコンサートには約3倍のギャラが払われるというのに
なぜそれでもドクターは南部をツアーをするのか

ある州では、日没後に黒人が外を歩くことさえ許さない法律がある
警察官も決して公平ではなく
雨の中、警察官に車を停められて口論になってしまい
2人は不当に連行されてしまう
そこにとんでもない大物(!!)の助っ人が!
(これも実話だそうです)
ただその人物に助けを求めたことを恥じて涙するドクター

と、なんだか辛いエピソード満載ですが
笑えるシーンもちゃんとあって
ケンタッキー州に入ったときに嬉々としてKFCに入るトニーと
フライドチキンなど食べたことがないというドクターの話は
かわいくて面白くて好きです
無人で売られていた天然石のエピソードと
トニーが奥さんに一生懸命手紙を書き続けることが
最後のシーンにつながっていてうるうるしました

米国公開:2018年11月
日本公開:2019年3月


本予告

2020年2月10日月曜日

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

ディカプリオ演じる俳優と
そのスタントマンのブラットピット
隣に引っ越してきた映画監督と女優の夫婦
かつての映画セットだった牧場で
集団生活をする謎の若者たち
そこに酒とドラッグが絡んで
とんでもない事件が起こる

この映画はチャールズ・マンソンという人物と
シャロン・テートの事件を知ってるか否かで
この映画の面白さが全然違うと思います

シャロン・テートの事件は
おそらく当時を知る年齢のアメリカ人なら
だれもが記憶してる事件なのでしょう
日本人にとっての地下鉄サリン事件みたいな感じかも?
私はシャロン・テートもチャールズ・マンソンも
名前は聞いたことあったけれど
事件の詳しい内容までは覚えてなかったので
最初に映画館でこの映画を観たときは
正直言ってあまり理解できませんでした

で、別記事に感想を書いていますが
「チャーリー・セズ/マンソンの女たち」という映画
これがチャールズ・マンソンとシャロン・テート事件の映画で
これ観てから「ワンス・アポン...」を再視聴しました
それで"なるほどそういうことか"と理解できた感じです

なので
チャールズ・マンソンとシャロン・テートについては
少し予習が必要と思います
知らないと面白くないと思う
「チャーリー・セズ」は
「ワンス・アポン...」の予習用としてはおすすめの映画です

「ワンス・アポン...」にチャーリーが登場するシーンがあります
シャロン・テートの事件を知らないと
あれがチャーリーだとわからないような短いシーンで
でもあれがチャーリーだとわからないと
そのシーンの意味がわからないと思います
その時チャーリーが口にするテリーとテッド・ウィルソンという名前
とても重要です

ケイト・ブランシェットの名前をエンドロールで見ましたが
どこに出てたのかわかりませんでした
たぶん他にもカメオ出演してた有名俳優がたくさんいそうです
スティーブ・マックイーンとブルース・リーについても知ってると
たぶんよりおもしろいし楽しめると思います
私的にはルーク・ペリーが出てたのが切なかったです
(「ビバヒル」の視聴者だったのでー)

予告編

日本公開:2019年8月
(再視聴:2020年5月)

2020年2月8日土曜日

映画「七つの会議」

キーワードは「ネジ」「椅子」「隠蔽」

原作 池井戸潤
監督 福澤克雄
制作 TBS

主演の野村萬斎以外はキャストもスタッフも
ほぼほぼまるっと日曜劇場
みんなこれが見たかったんでしょう?と言わんばかりの
ある意味期待を裏切らない演出
どうしても香川照之にうならせたいらしいww
萬斎さんが主役なので
どんなにのらりくらいしてても
ただのぐーたら社員じゃないことは初めからわかるし
他は誰が裏切っても、誰が寝返っても
さほど驚きはありません
でも安心してみられる、最後はちゃんとすっきり終わる
という安心感はあります
でも7つの会議がどれとどれだったのかは
いまいちわからなかったです😅

ドーナツ企画の浜本優衣役の朝倉あきちゃんがかわいい
ドーナツ食べたくなりました🍩

2013年にNHKで放送されたドラマ版は視聴済み
でも雰囲気は全く違いました
タイトルが違ったら同じ話だってわからなかったかも
NHK版の主役は八角ではなく原島課長で、東山紀之が演じてました
 
公開:2019年2月

 映画「七つの会議」Twitterより

本「坂の途中の家」角田光代著

負のスパイラル
抜け出してしまえば何てことはないのに
その渦の中にいるときは
自分を思って発せられた言葉も、行為も、贈り物も
すべてが悪意に満ちた攻撃に思える
自分はダメだと、普通のこともできない人並み以下の人間だと
見下されている気がする

理沙子は専業主婦。2才の娘の母親。
ある日裁判員の候補になったという通知が届く
選出されたその日から始まる公判
扱う事件は乳幼児虐待死
被告は生後8ヶ月になる娘を浴槽に落とし死亡させた30代の主婦
検察側と弁護側はそれぞれ正反対のストーリーを組み立てる
夫とその母親、友人、実母、そして被告本人
理沙子と同年代の被告の日常が重なる

理沙子の目を通して見た裁判、現実の生活と過去
被告に感情移入するあまり、日に日に疲弊していく理沙子に
自分も感情移入してしまうほど情景描写が秀逸でした

普通って何だろう?
理沙子は「普通」であることに囚われる。
子育てのことも、裁判員のことも、
「普通」のことができていないのではと不安になる。
自分は他人より劣っているのか?
おかしいのではないか?

裁判員
まだ私自身も周りの人にも選ばれたという話は聞いたことがないけれど
もし自分が選ばれたら、自分が感じたものが他人と違ったら
その場で自分は違うと言えるだろうか?
他人の意見に影響されて、気持ちが揺れ、迷い、悩む
その中でそれぞれの「普通」を探っていくしかないのかもしれない

著者 角田光代
読了 2020年2月

 朝日新聞社版

2020年2月5日水曜日

映画「万引き家族」

寒い冬の夜
ゴミ捨て場に寝巻き姿で佇む少女
見かけるのは初めてじゃない
見かねた中年男が声をかける
少女は黙ってついてくる
たどり着いた家は狭く散らかっている
そこに暮らすのは男の妻らしき女と老女、若い女と少年
どこかちぐはぐなその家族には秘密があった
仕事はしているが収入はわずか
老女の年金が頼り
食料品や日用品を日常的に万引きで賄う
間違ってることはわかっている
わかっているが抜けられない
その場しのぎのような生活は
あることがきっかけで限界が来る
その時、明らかになる秘密
貧困と暴力 血の繋がり 本当の家族とは? 愛情とは?

取り調べの最中、老女を捨てたと責められるノブヨ(安藤サクラ)のセリフ

 捨てたんじゃないです
 拾ったんです
 捨てた人っていうのは別にいるんじゃないですか?

刺さります

家族のもとに返された女の子の姿が
実際にあった事件、父親に虐待されて亡くなった小4の女の子と重なって
もやもやしました
いろいろ間違ってて、明らかにダメな家族だったけど
あの子を思う気持ちだけは本物だった
ちゃんと愛して大事にしてたのに

さすが是枝監督作品と言ってしまいたくなるほど子役がいいです
台詞じゃなく視線と仕種でその感情を表す
子どもの表情が秀逸でした

公開:2018年6月

 「万引き家族」公式サイトより

 
 Trailer


2020年1月30日木曜日

映画「ロケットマン」

原題:Rocketman

まるでハロウィンコスチュームのような衣装で
バックステージをドスドスと歩いてくる姿は
つい笑ってしまうほど滑稽なのだけれど
その姿で語られる彼の物語は
苦悩と葛藤に満ちています
地味で内気な少年だった彼が
なぜあそこまでド派手な"エルトン・ジョン"を演じる必要があったのか

愛していないのか、それともただ愛し方がわからないだけなのか
なぜか子どもと向き合えない両親と過ごした幼少期
でもその幼少期にピアノに出会えたことと
その才能を見抜いてくれた祖母がいたことは
彼にとって幸運なことでした
そしてもう一人、のちにブラザーと呼べるソングライターに会えたことも

とにかく圧倒的に音楽がいいです
曲がいいのはもちろんだけど、その使い方が絶妙
ミュージカル調だけどセリフの無理矢理感は無く
セリフから歌へ流れていくような演出で気持ちよく聞けました
ずっとミュージックビデオを見てるような心地よさで
でもちゃんとストーリーがあって笑って泣ける作品です
Your Songができた瞬間のシーンは鳥肌うるうるポイントでした

公開:2019年9月

予告編


映画「コーヒーが冷めないうちに」

小さな町の喫茶店
その店のある席に座ると過去に戻れるという噂がある
その噂を聞きつけた客が半信半疑ながらやってくる
噂は本当で、戻ることはできるのだが、いろいろと条件がある
まず戻っても過去を変えることはできない
戻れる時間は、女性店員が淹れたコーヒーが冷めるまでのほんの短い間だけ
それでも戻りますか?と問う店員
戻る意味はあるのか?

喫茶店の店員には有村架純
彼女が淹れるコーヒーをきっかけに
"その"椅子に座った人が過去へ戻る
そんな人たちのストーリーが3つと
彼女自身の話で計4つの物語
それぞれが、ほっこりしたり、せつなかったりで
4回泣けるという謳い文句でしたが
どうかな?ちょっと言い過ぎかなw
私が泣けた話はメインの話ではなく
サイドストーリーの1つ
松重豊と薬師丸ひろ子のエピソード
これがすごーく良かった
この話だけでショートムービーを作っても良かったんじゃないかと思うほど
二人の演技は別格ですばらしかったです
これだけでも見る価値ありです

2017年本屋大賞受賞の同名小説の映画化
原作未読

公開:2018年 9月

本「六番目の小夜子」恩田陸著

学校で密かに行われる行事「小夜子」
誰が何のために始めたのか、誰も知らない
にもかかわらず、受け継がれる"鍵"

高校生活最後の年
その初日
花瓶に生けられた真っ赤なバラが教卓に置かれる
それは小夜子が現れた合図
そして転校生がやって来る
誰もが見惚れるほどの美少女
名前は津村沙世子
偶然?それとも彼女が今年のサヨコなの?

高校最後の一大イベントである文化祭で
全校生徒参加で演じることになった舞台が
異常な緊張感と高揚感を生み、文字通りの嵐が起きる
サヨコの正体とは?

初版は1992年。恩田陸のデビュー作。
彼女の描く学校は昭和のにおいが残る
木造校舎、古い部室
たまり場の喫茶店
まだ携帯電話の無い時代
家にかかってくる電話、母親の呼ぶ声
教師が職員室で使っているワープロ

だいぶ大人になってしまった今でも
高校生の話が楽しめるかしら?
なんて思いながら読み始めましたが
そんな昭和のにおいのせいか
すんなりタイムスリップできました。
真っ暗な体育館で
私も順番を待っている気持ちになれて
ドキドキしました。
突っ込みどころはいくつかあるけれど
それを差し引いてもおもしろいと思える作品でした。

新潮社サイトより

2020年1月27日月曜日

映画「ハナレイ・ベイ」

「女の子とうまくやる方法は3つしかない
 相手の話を黙って聞く
 着ている洋服をほめる
 できるだけおいしいものを食べさせる
 これだけやってだめならとりあえずあきらめた方がいい。」

原作は村上春樹
「東京奇譚集」という短編集に収録されています
このセリフはそのまま原作にありました
ってことは村上春樹のことばですね
当たってるかな?
信じるか信じないかはあなた次第w
シングルマザーと息子
あまりうまくいっていない親子関係
その息子がハワイへサーフィン旅行中に サメに襲われて突然命を落とした
悲しみと後悔
やりきれないもやもやした気持ちを抱えたまま
母は毎年息子の亡くなった季節にその地を訪れ
ただ海を眺めて過ごす
美しい海辺の景色
自然は雄大で容赦がない
憎しみも、愛も、後悔も、希望も
すべて飲み込んで、ただそこに存在する

ストーリーは地味で登場人物も少なく ほとんど母親役の吉田羊の独壇場
キレイで、気が強くて、でもどこか脆い そんな母親の複雑な感情が伝わってくる演技でした

 I hated my son, but I loved him.

やっと言えたこのセリフと ラストシーンの表情がすごくよかった

現地で偶然出会う若者に村上虹郎
ぴったりの役でした

原作は手元にあったので映画見終わってから再読
原作の方がだいぶあっさりした印象で 映画は原作に少し肉付けされた感じです

公開:2018年10月

Trailer

2020年1月26日日曜日

映画「十二人の死にたい子どもたち」

ある自殺サイトの呼びかけで
集まった12人の子どもたち
みなそれぞれに"死にたい"理由を抱えている
お互いのことはよく知らない
ただ同じ目的のために集った12人  のはずだった
でも"決行"の場所に集まったのは何故か13人
謎の1人はすでに死んでいる!?
彼は自ら命を絶ったのか
それとも…

まずはすぐに決行するか否か決を採ろうという主催者
彼もまたもまた自殺志願の高校生
全員一致が決行の条件だと言う
すぐにでも決行しようという子が多数を占めるが
"空気の読めない"1人が反対する
理由は謎の13人目について知りたいから
しぶしぶながら全員協力しての推理が始まる
いろいろ調べていく中で
それぞれの死にたい理由が徐々に明らかになる
深刻なものから、そんな理由で?と理解できないものまで
そして謎の13人目への反応も様々
多感な年頃
なげやりになったり
未来に絶望したり
罪悪感を背負っていたり
他の人が死にたい理由を知ることで
それぞれの気持ちに変化が現れる
他人の死にたい理由と13人目の正体がわかったとき
子どもたちはどんな結論を出すのか?

15~18歳までの子どもたちを演じるのは新進気鋭の若手俳優たち
中でもすでに名の知れた実力派、新田真剣佑、杉咲花、橋本環奈、北村匠海
彼らの演技はさすがです
達観したような大人びた落ち着きの中に子どもの危うさ脆さが見え隠れする
揺れる子どもたちの心の動きがしっかり演出されていました
私のイチオシは北村匠海くん、良かった!

13人目の謎解きというサスペンスな内容ですが
ハラハラドキドキはそれほとでもなく
だんだん明らかになる子どもたちの死にたい理由と
心の変化をなるほどねーと静かに見守る感じの映画でした

公開:2019年 1月
映画「十二人の死にたい子どもたち」オフィシャルサイト

ドラマ「地獄が呼んでいる」(全6話)

ある日突然 なんの前触れもなく目の前に現れる顔 その顔がこう告げる 「お前は○○後の××時に死ぬ  そして地獄へ行くことになる」と その予告から死までの時間は人それぞれ 数年後の人もいれば、ほんの数十秒後の人もいる 予告された時間になると 3体の怪物のような使者が現れ 対象者を暴...